2020年4月現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界はまさにパニックだ。
このコロナウイルスがもたらす重病や死は恐ろしい。我々は試されていると思う。
「人々が共通の恐怖を持ったとき世界は一つになれるのか」
そう、まさにこの『宇宙戦争』がそれをテーマにしているのだ。
Tom Cruise stars in a remake of the 1953 adaptation of HG Wells’s classic novel.
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— BBC (@BBC) March 26, 2018
Contents
あらすじ
離婚しベイヨンで一人暮らしをする主人公レイ・フェリエ。仕事は貨物港でのクレーンオペレーター。
離婚した妻が実家に帰る間、二人の子供であるロビーとレイチェルを預かることになるが、二人と良好な関係を築けずにいた。
ある日、奇妙な数十回の落雷を目にする。同時に町中が停電し、家電や自動車がほとんど機能しなくる。落雷した場所を見にいくと、小さな穴があった。すると地割れと共に巨大な三脚歩行機械「トライポッド」が地中から出現する。突如現れたトライポッドは光線のような兵器で次々に人々を殺戮してゆく。
なんとか逃げ延びたレイは、レイチェルとロビーと共に盗んだ車で町を出る。しかし、途中、レイたちが乗っていた車は群集に襲われ銃を持った男に奪われる。トライポッドはすでに世界各地で侵略を始めていた。
人類は抵抗するもなすすべなく撃破されていき、逃げ場はない。
人類が持つあらゆる兵器や軍隊も「侵略者」には手も足も出せない。
果たして人類はこの恐怖とどう立ち向かうのか──
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— Tom Cruise (@TomCruise) October 9, 2013
9.11同時多発テロで受けた人々の衝撃を描いた
監督を勤めたのはハリウッドを代表する映画監督スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)。
宇宙戦争の原作はイギリスの著作家H・G・ウェルズが執筆した小説だが、スピルバーグはこの原作に加え、過去にすでに製作されていたラジオドラマ(1983年)や映画(1953年版)の内容を引用している。
本作で注目すべきは、2001年9月11日に起きたニューヨーク同時多発テロ事件で受けたアメリカに住む人々の衝撃や当時の思いを反映させたシーンの数々だ。スピルバーグは、当時の衝撃を描くため、人探しの張り紙が掲示板に無数に貼られていたり、ジャンボ旅客機が墜落したシーンなどをあえて作中に入れた。
Steven Spielberg, Dakota Fanning & Tom Cruise on the set of "War of the Worlds." The film, nominated for three #Oscars, is at @TIFF_NET tomorrow, January 3rd, at 9:45pm. #StevenSpielberg pic.twitter.com/8ubHiYbibx
— Every Oscar Ever (@EveryOscarEver) January 2, 2019
スピルバーグ作品独特の映像表現
撮影監督を勤めたのはヤヌス・カミンスキー。彼はよく『銀残し』と呼ばれる撮影技法を使い、「昔のカメラで撮ったようなざらっとしたノイズ感」を出すことでシーンの「不穏さ」を強調する。この手法は他のスピルバーグ作品でも使われている。例えば、同じくヤヌスさんが撮影したジュラシックパークシリーズの2作目『ロスト・ワールド』では、別の人が撮影監督を努めた1作目の『ジュラシック・パーク』とは映像の色が全く異なる。
本作『宇宙戦争』や『リンカーン』などでも、同様の手法を用いて大人びた画を作り出している。
ジュラシックパークを思い出す”あの”シーン
Just rewatched original Jurassic Park for who knows what time, and i have a question for you @KlaytonFioriti, what is the most haunting scene for you in Jurassic Park? For me it's the kitchen scene pic.twitter.com/Y5F7mvyHNT
— Son of Jupiter 12 (@RomanCaesar12) January 3, 2019
作中、レイ(トム・クルーズ)とレイチェル(ダコタ・ファニング)が地下室に逃げ込むシーンがある。このシーンを見て思い出すのは、やはりジュラシックパーク(Jurassic Park)でレックスとティムが凶暴な肉食恐竜ラプトルから身をひそめるあの厨房のシーンだ。
こういった手に汗を握る緊張のシーンを描かせるとスピルバーグの右に出るものはいないのではないかと思う。
本作『宇宙戦争』でも地下室に触手のような形状をした”奴ら”の探索機が入ってくる。静かに身を潜めて入れば問題なく乗り切れたであろうこのシーンだが、やはりそこはお決まり。ジュラシックパークのレックスよろしく、レイチェルが思わず物音を立ててしまう。
思わず見ている自分まで息を止めて見入ってしまうシーンだ。
墜落した旅客機へのこだわりがスゴイ
ユニバーサルスタジオ・ハリウッドでは実際にシーンの撮影で使用された飛行機墜落現場のセットを見ることができる。
筆者も2年ほど前に参加したので、そのときの写真を掲載する。
とにかく細部へのこだわりがすごい。
実際にUSH(ユニバーサルスタジオ・ハリウッド)に行って見るとわかるのだが、墜落した飛行機のサイズは原寸大なので、迫力がすごい。
流石はハリウッド。製作費約140億円はここに注ぎ込まれたのでは?と思うほどの規模感である。
スピルバーグのこのシーンへのこだわりが見える。
映画のメイキングでもスピルバーグ本人が公言しているのだが、これらは9.11の同時多発テロ事件を連想させるために、より力を入れて撮影されたシーンだそうだ。
画像: Rob Young | War Of The Worlds – Plane Crash Set
ちなみにこの墜落機、元全日本空輸(ANA)で使用されていたボーイング747SRで、ANAのあのトリトンカラーを機体に残したまま使用されたらしい。
共通悪を持った人々は助け合えるのか
筆者が今になって改めてこの映画に着目した背景には、現在の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う今の世界の情勢があった。
個人的にはこの映画の裏テーマでもあると思うのだが、地球外からの未確認生物襲来による古典的SFパニック映画である『宇宙戦争』では、パニックの中で人々は必ずしも助け合うわけではないことも描かれている。特に心象的なシーンはレイ(トム・クルーズ)と息子達3人が車に乗って逃げていく途中、群衆に囲まれ襲われるシーンだ。襲いかかる人々は決して特別な悪人や犯罪者ではなく、我々と同じ一般市民なのだ。
レイチェル(ダコタ・ファニング)が車に取り残され、切羽詰まったレイは所持していた拳銃を群衆に向けるが、その銃も奪われ3人がなんとかその場を逃れた後には、銃声が鳴り響き人間同士で争う最悪の事態に…
それとは対称的に、レイ(トム・クルーズ)の息子ロビー(ジャスティン・チャットウィン)が道中に通りがかった軍事部隊を追いかけ「自分も力になりたい、軍隊に入れてくれ」とせがむシーンがある。その真意は個人的感情からか、人類のためという献身の精神かはわからない。
しかし我々が“囚人のジレンマ”に陥ることなく、新型コロナウイルスの脅威に立ち向かっていくには、愛する人のため、隣人のため、地球のため、そういった精神を持って自らの行動に責任を持たなければならない。
宇宙戦争を鑑賞した人たちの評価
人は共感することは好きだけど、生存本能があらわになると強欲な生き物なんだなーって思いました。
自分だけは助かりたいって感じてしまうのは何なんでしょうね..
追い込まれた時こそ如何に冷静でいられるのが大事やと感じられました。
ダコタ・ファニングはあんな小さいな頃から活躍されてるなんてベテラン女優ですね。ファンの方でしたら必見だと思います。
オリジナル版が制作された頃から映像技術は大幅に進化したので、リメイク版の本作のトライポッドの攻撃シーンは迫力がありました。加えて「家族の絆の再生」というようなテーマもフォーカスされ、ストーリーがより親近感が湧くものになっていました。それにしてもロビー(息子)の自己中心的な行動は結構やばめでしたね笑
スピルバーグ×トム・クルーズが日本で売れないわけがないです。
ギャーギャー騒ぐダコタ・ファニングも演出の1つなのでしょうか。
ダメな親父感たっぷりのトムクルーズの笑顔最高でした。2000年代以降、トムクルーズはこういった演技が上手いですね。
タイトルからするとスペースバトルを繰り広げる映画かと思っていましたが
宇宙人が襲来するというホラー(?)映画でした。
ジュラシックパークの厨房のシーンをさらに怖くしたシーンには、めっちゃ満足しました。
あれよあれよという間にラストを迎えてしまいましたが、もうそこは何も言いません。
筆者のひとこと
人間が顕微鏡で水滴の中の微生物の動きを観察するように、地球外から水滴のような地球を監視されていたって話ですね。
古典的な宇宙生物襲来SF映画ですが、スピルバーグが描くとワンシーンワンシーンの緊張感・臨場感が圧倒的です。
スピルバーグ映画が好きならぜひ見るべき一本です!