『舟を編む』の意味とは?松田龍平の「言葉」への愛が微笑ましい。作品・キャスト徹底レビュー

舟を編む??このタイトルに意味がわからない人が多いことだろう。
三浦しをんの小説が原作で、映画以外にアニメ化もされている本作。
主演の松田龍平、深夜食堂で知られる名俳優の小林薫、個性派でどんな役でもこなすオダギリジョーといった豪華キャストが揃う本作は、2014年第37回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を含む6冠を達成した。
今回は原作、映画、アニメでもヒットをしているその理由と、本作の見所を徹底解剖していきたいと思う。

あらすじ


制作途中の辞書「大渡海」を監修する国語学者、松本(加藤剛)とその編集者、荒木(小林薫)の元に新しく配属された馬締光也(松田龍平)
社交性が低い馬締は宣伝部で邪魔者扱いであったが、新しく配属された辞書編集部で次第に力を発揮していく。ある日、馬締は下宿先にへ越してきた馬締は香具矢(宮崎あおい)と出会う。香具矢もまた、自身の料理への道に真っ直ぐな志を持った女性であった。馬締は香具矢へ一目惚れし、自分の想い言葉で伝えて交際がスタートする…。
それから13年の月日が経ち、「大渡海」の出版が実現に迫った頃、「大渡海」を当初から監修していた松本に食道がんが見つかる。なんとしても出版までに「大渡海」を完成させるべく、一層の熱と命を注ぐ馬締だが…

「舟」とは言葉の海を航海する「辞書」のこと

本作の名前で検索すると、「舟を編む 意味」と言う検索ワードが出てくる。恐らくタイトルの意味がわからない人たちが多いのだろう。もちろん、作品を観ていない人はこのタイトルを理解できない。観ていない人はまず本作を観てほしいが、このとは本作で最も重要な辞書のことである。
本作では言葉の重要性、面白さに魅了された登場人物たちを中心に描かれており、言葉への尊敬を止まない姿が暖かく描かれている。上に添付したYouTubeでも見ることができるが、松田龍平演じる馬締が「右」と言う言葉を説明せよと荒木(小林薫)に問われるシーンは非常に愛らしく、「言葉」に対してあまり執着がない我々でさえも「言葉」の面白さを感じることができる。

「辞書」と言う「舟」を編む!言葉に魅了され、「大渡海」へ熱と魂を注ぐ人々


私が本作で感じたことは大きく2つある。
1つ目は、普段何気なくある身の回りの物の裏には、多くの人々の熱意と魂がある。ということ。
我々が日常生活で接する物事全てに様々なストーリーがあり、携わった人々がいる。そんな当たり前のことを特に意識せずに我々は当たり前のように過ごしているのだ。
辞書編集者は一例であり、様々な人々の魂と熱意で世の中は回っているのだなと改めて思った。
2つ目は、夢中になれるものに魂を注いで働くことができる喜びだ。
松本が遺書で「君たちに出会えてよかった」と記しているように、「大渡海」の出版まで携われることが不可能であっても、一緒に「大渡海」の作成に携われてよかったというメッセージが込められている。
夢中になれるものに従事できる喜び。結果を求めてしまいがちな現代の私たちへ、何か救われるような暖かいメッセージだ。

馬締を演じる主演・松田龍平の魅力

昭和を代表する俳優・松田優作の長男で、様々な映画やドラマで活躍する本作主人公の松田龍平。私は彼の芝居はいつも素晴らしいと感じており、ファンの一人だ。
彼しか持たない独特な雰囲気、容姿、感性が本作でもかなり発揮され、馬締という役は彼以外務まらないんじゃないかとさえ思う。
「パッチギ」で知られる井筒和幸監督が「役者は役作りしちゃ終わりだ」とインタビューで語っていたが、正に彼はその言葉にぴったりな俳優ではないか。どんな役でも彼の色に染めてしまうような魅力がある。「役作りをして、いかに役へと近づくか」という事が役者として称賛されがちだが、彼はその逆をいく俳優で、役が彼に近づいているようなそんな感覚に陥るのだ。
昨今では「カメレオン俳優」と言ったフレーズが流行るように、どんな役でもこなす俳優がフューチャーされがちだが、彼のような俳優も非常に魅力的で、日本映画界に大切な存在だろう。

『舟を編む』を鑑賞した人たちの評価

言葉の海を航海する舟。それが辞書。その荒波にも負けない舟を作る熱い編集者の話。結果が出るまでの効率と早さが重要視される最近の世の中で、10〜20年もかかる仕事。 エンタメ性と内容の割に軽さを備えた作品で本屋大賞らしさが伺える。悪い人が登場人物にいないのでストレスが無い。精神的に疲れた人やにおすすめ。

女性

男性

馬締にも、辞書の編集事業にも、無機質な堅い印象があったけど、物語が進むうちに人間らしさや奥深さが次第に理解できた。ア、カ、サ行の言葉が日本語には多用されることなど、初めて学んだことも多く、辞書に関する興味が増した。何か言葉の意味を理解したいときに辞書を引くのなら、この作品が辞書と言うものを説明する辞書だと思った。
『小さい頃の記憶があまり無いのは、語彙力が無くて記憶へ残せないからだ』誰かの著書で読んだ。そして毎日、いろんな本を読み漁り、いろんな世界へ逃げることで毎日どうにか過ごせている自分。言葉は本当に素晴らしく、本当に感謝!と再認識することができた。編纂作業シーンは臨場感や迫力があって興奮しました。面白すぎる、松田龍平さん演じる馬締さんの恋文を全文読んでみたい。

女性

筆者のひとこと

自分の仕事に夢中になる。そんな喜びを噛み締めながら日々過ごすことができる人々はごく一部かもしれない。様々な理由で仕事自体に携われる喜びを感じる余裕がない人がほとんどだろう。
本作によって多くの人が、この「喜び」がいかに人生にとって貴重なものか再確認できたのではないだろうか。