半地下の匂いまで再現?映画『パラサイト 半地下の家族』の裏舞台!レビュー・評価・あらすじ

第72回カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督最新作『パラサイト 半地下の家族』。

アメリカのメディアTheWrapなどの報道によると、2020年4月に米Huluで独占配信が開始されて以来、全体で2番目に多く視聴され、インデペンデント系の映画では1位の視聴数となったそうだ。
しかし、その評価は大きく二つに割れている。

今回は、韓国を舞台に裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる物語を描いた本作品を紹介していこう。

あらすじ

4人家族のキム一家は半地下の薄汚れたアパートに住んでいた。ある日、息子のギウは名門大学に通う友人ミニョクの紹介で、超富裕層のIT社長パク氏の娘、ダヘの家庭教師の仕事を勧められる。ギウは高台の高級住宅街へ面接に行き、パク夫人も授業の様子を見学する中、無事に英語の家庭教師の仕事が決まる。帰り際、パク家の息子ダソンの描いた絵画を見つけ、パク夫人が絵の家庭教師も探していることを知る。ギウは一人思い当たる人物がいる、と言い、大学の後輩を装って妹のギジョンを紹介するが…貧困層のキム系と超富裕層のパク家の出会いは、誰も想像しなかった悲喜劇へと加速していく――。

最初のタイトルは『転写』だった

『パラサイト』はコミカルに描かれていてとても見易い映画だが、そのテーマは非常に深い。最初は「転写」というタイトルだったそうで、作中には『対』になるものが多く登場する。特に印象的なシーンとしては、登り坂や下り坂、階段の上下など多く登場するが、それらが富裕層と貧困層の格差を映像の中でうまく表現している。本作品の監督・脚本であるポン・ジュノ自身もこの映画を『ケダンシネマ(階段シネマ)』とか『ケダンヨンファ(階段映画)』と呼んでいるそうだ。経済格差が世界に広がっている今こそ、世界の現在を反映したかのような、この作品のインパクトは絶大なものとなっている。

この映画に本当の悪役はいない

ポン・ジュノ監督は、映画『スノーピアサー』の製作中に、金持ちと貧しい家族をテーマにした作品のアイデアを思い付いたそうだ。『スノーピアサー』も階級社会との戦いをテーマにしたアクション作品だったわけだが、もっと身近なストーリーで現実的に語ってはどうだろうかと考えていたのだ。どちらかが善でどちらかが悪ということではなく、社会のシステム自体が原因で「寄生(パラサイト)」が生まれたのである。ポン監督は「この作品では登場人物の誰もがグレーゾーンにいる。」と語っている。

魅力的な建築物のセット

本作品に登場するパク家の豪邸とキム家の半地下の家は、全て撮影用のセットとして建設されている。パク家の豪邸のセットは、プロの建築家のアドバイザーとパク監督の意見を取り入れて制作されたそうだ。監督は家の構造を重要視しており、ある人物がしていることを、別の人物がどう見るのか、見えないのか、といった点にこだわってデザインしたそうだ。半地下のセットは、本作の美術監督であるイ・ハジュンが、自身の大学生時代に暮らしていた半地下を思い出しながら構想したそうで、壁に染み付いた垢や半地下の匂いまでもセットの中に再現した。本作の評価の中でも、社会の両極化をうまく視角化したこの豪邸と半地下のセットはとりわけ称賛された。

カンヌで非英語作品の史上初の最高賞

本作は第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した。非英語作品の作品賞受賞は史上初めてのことである。さらに、第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門で受賞し、アカデミー作品賞とカンヌの最高賞の同時受賞は65年ぶりの快挙となった。

米国トランプ大統領が韓国映画であるパラサイトがアカデミー作品賞を受賞したことを批判したことがニュースとなったが、アメリカの配給会社NEONはTwitter上で、これに対し「わかります、字幕が読めないんですね」とツイートしたことでさらなる話題を呼んだ。

パラサイトを鑑賞した人たちの評価

男性

今までハードルの低かった韓国映画だったためか近年ではNo.1の面白さだった。
映画の内容から展開まで全てが観ていて飽きのこないリズムの作品だった。
「グロい」や「気持ち悪い」などの感想ばっかりだったのでかなり覚悟して見たけど、おもしろかった!

女性

男性

韓国の格差社会の厳しさを知った。いいテンポで話が進んでいくため、見ていて飽きなかった。

筆者のひとこと

格差社会というダークな部分を描いた作品だが、ところどころ笑いどころが散りばめられていて終始楽しめる。ストーリー展開にはいい意味で予想を裏切られる。劇中の露骨な描写が評価の賛否を生んだようだが、そのこだわりが本作品をただのコメディーで終わらせずよりドラマティックな作品にしたのではないだろうか。しかしながら、筆者としてはカップルの初デートにはオススメしない。