本日公開『TENET テネット』クリストファー・ノーラン史上最も難解な時間操作:初日レビュー

本日から日本全国でクリストファー・ノーラン監督最新作『TENET テネット』が公開された。

ノーラン監督はこれまでに「メメント」「インセプション」「インターステラー」など数々の名作の中で複雑な『時間操作』を駆使した作品を作ってきた。
そんなノーラン監督が今回挑戦したテーマは「時間の逆行」だ。

ザックリあらすじ

ウクライナのオペラハウスで観客全員を人質にするテロ事件が発生。
大量虐殺を阻止すべく突入する特殊部隊、その中にある特殊任務を任された”名もなき男”が紛れていた。
男は仲間の救出に成功するが、身代わりとなり捕らえられてしまい、その場で自殺用に渡されていた毒薬を飲んだ。

しかし、薬は鎮静剤にすり替えられていた。昏睡状態から目覚めた男は、フェイと名乗る人物からあるミッションを命じられる。

「未来から送られてきた”時間の逆行”を可能とする装置を使い、未来の第3次世界大戦を防げ」

混乱する男に、決して忘れてはならないキーワードとして”TENET(テネット)”という言葉が伝えられる…

映画『TENET テネット』の感想

冒頭から一瞬も目が離せない、仕掛け満載のストーリーだった。海外での公開後からネット上では、様々な考察が繰り広げられていたが、確かに前評判通り、『TENET テネット』は難解だった。出演した俳優陣も、さらには監督自身も脚本全体を把握するのに苦労したという。
しかし一度見ただけでは全てを理解しきれない、難解なパズルだらけの映画こそ、ノーラン作品の魅力とも言えるだろう。

初めて『TENET テネット』の予告映像を見たのは、昨年の12月20日『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』IMAX上映の時だ。本作は異例なプロモーション手法としてスター・ウォーズ本編前に6分間にもわたる『TENET テネット』のプロローグ映像を流した。

序盤に流れるテロリストに占拠されたオペラハウスへの突入シーン。緊迫感が漂う特殊部隊の映像の中に、ある違和感が残された。それは銃弾が逆行するシーンだ。
『TENET テネット』予告編は本編開始前の会場をざわつかせていた。

クリストファー・ノーラン監督といえば、緻密に設計されたストーリーと、複雑な時間操作だ。
銃弾が逆行するシーンを見て、筆者が思い出したのは「メメント」(2001)だ。ノーラン監督の作品が好きなファンなら、誰もが知っている名作「メメント」では、冒頭から時系列が逆に進んでいくストーリー構成で、銃弾が逆行するシーンもメタファーとして描かれている。
ノーラン監督は、記者会見の中でも「メメントで描いたような奇妙なコンセプトを、スパイ映画というジャンルに乗せてはどうだろうか?」と6〜7年前から構想を練っていた、と語っている。

また、「インセプション」(2010)の発表時に「いつかボンド映画を監督したい」と語っていたほど、スパイ映画への思い入れが強いノーラン監督。これまでの作品で研究を積み重ねてきた「時間操作」とずっと自分の手で描きたかった「スパイ映画」の掛け合わせは、いわばクリストファー・ノーランの集大成と言える。

VFXや特殊効果に頼らず、できる限り実写で撮影するのもノーラン監督作品の魅力の一つだ。作中に登場する航空機や船舶も全て実写だ。船に関しては最終的に100隻ほど使用することになり、その保険金は1億ドル(約110億円)にも及んだそうだ。

複雑なストーリーを一度で全て理解する必要はない。詳しい解説はネットの人々に任せて、まずは大迫力の映像に素直に酔いしれるのもいいだろう。
最近では世界の情勢も大きく変わり、劇場へ直接足を運ぶ機会が減ったという人も少なくないだろう。映画と人々の関わり方は岐路に立たされている。
筆者としては、「劇場に人を呼び戻したい」という期待を一身に背負った本作を、そしてクリストファー・ノーランの生み出す新たな世界を、ぜひ劇場で味わって欲しいと思う。

劇場グッズを入手

公開初日に劇場へ足を運んだので、限定グッズを入手できた。
制作現場の様子が満載の冊数限定メイキングブックも用意されていたので、そちらの魅力も後日紹介しようと思う。


『3000冊限定-メイキング・オブ・TENET クリストファー・ノーランの制作現場』 6,600円(税込み)
『TENET 劇場パンフレット』 900円(税込み)